試験勉強で俗に言われる「過去問」。
その重要性を、3つの視点で、私なりに説明します。
まず、解く側の視点です。合格者というのは、過去問に載っている知識は完全に知っています。同じことを逆に言うと、過去問をこなしたからこそ合格したとなります。ということは、本試験で過去問に関連する知識が出題された場合、その問題を落とすと、ものすごく差がつくということになります。
大体過去問関連問題は正答率70%を超えてくるだろうから、この失敗を埋め合わせるためには、正答率50%以下の問題で正解を出すという「大ファインプレー」が必要とされます。「大ファインプレー」も過去問関連問題も「1点は1点」なのだから、過去問関連問題を落とすのは効率が悪いとも言えます。過去問を落とすと差が付きます。
次に、出す側の視点です。みなさんは普段は問題を解いてばっかりです。しかし、出す側の視点に立てば試験の違った側面が見えてきます。過去問も出す側の視点で見ると、毎年毎年同じ傾向の問題が相も変わらず出題されます。時には出題の傾向が変わる科目もありますが、出題の傾向が変わりやすい科目は過去問を検討すればわかるので、傾向の変化はある意味「予想の範囲内」です(例:経営学、文学芸術等)。
問題の傾向が固定されがちな理由は、問題を作る人間も組織の人間なので、「先輩の顔には泥を塗れない」というものが挙げられます。傾向をガラっと変えるのは、「先輩の問題は間違っていました」と言わんばかりの行為です。組織の人間は先輩には弱い。
それに過去問は時を経て実績を出してきたという側面も見逃せないです。組織の人間は粗相を嫌います。新問題を出して冒険した結果粗相になって、責任を取るのは他ならぬ自分自身です。
組織の人間は、前例のない問題をなかなか出せません。過去問の傾向は変わりません。
最後に学者の視点です。過去問はやっぱり各科目の「メジャー」な、口語で言えば「ベタベタ」な論点ばかり訊いています。試験委員の大学の先生の関心が出やすいという側面は否定できないものの、学者の目から見ても、公務員としての「常識」を身につけるべく、その科目・学問分野の「王道」の論点が出やすいです。
思想で言えば、西洋思想のメジャーどころが頻出で、イスラム神秘思想とか、インドの深遠な哲学思想とかそういうのは非常に出にくいです。
ということで、過去問はやっぱり固定されがちな論点を毎年訊いてくることになります。
過去問は繰り返すのです
過去問は落とすと差が付くし、繰り返し出るし、内容も常識的だから、出るのです。
以上3つの視点から過去問の重要性を指摘しました。
相手の立場に立つ(試験問題では出題者側)のも一つの力です。自己の客観視です。
面接試験に強いのは、自分自身を客観的に見れる人です。
【中島講師 プロフィール】
94年7月外務I種最終合格。国家I種経済職も1次合格していたが、外務I種合格により辞退。
外務省は4年勤務、アラビア語研修を命ぜられ、中近東第1課、エジプト大使館に勤務。諸事情により任期途中で日本に戻り人事課等に勤務。
2001年より公務員試験講師。延べ2400回の授業、24000人の学生に講義。
主な著作:「受験ジャーナル直前対策ブック 暗記科目の語呂合わせカード」、「語呂合わせで急所をチェック 公務員試験」(文芸社)