極端な表現の選択肢は往々にして間違い、というのはこのコラムでも書きましたし、受験生の方はご存知だと思います。
その中でも、文末の「ことはない」は、ほぼ間違いになる表現の一つです。
敷金が授受された賃貸借契約に係る賃料債権につき抵当権者が物上代位権を行使してこれを差し押さえた場合において、当該賃貸借契約が終了し、目的物が明け渡されたとしても、それまでに生じた賃料債権が、敷金の充当によって消滅することはない。
司法試験の短答試験の平成20年25番の選択肢4番です。
いろいろ難しいことが書いてありますが、文末の「ことはない」より、これは間違いの選択肢です。
ちなみに、この25番は「誤っているもの」を選ぶ問題だったので、この選択肢4番が正解となりました。
他の選択肢は、文末は普通です。文末の「ことはない」は間違いになるというテクニックを知っていれば、10秒で答えが出る問題でした。
「ことはない」が正しいこともありうるでしょうと、言われる受験生もいます。しかし、「ことはない」が正しいというのは、問題として成立しないくらい当たり前に正しい場合がほとんどです。例えば、「日本国憲法は改正されたことはない」という類の表現になります。問題として、皆が迷いそうな「ことはない」というのは、ほぼ間違いなのです。
厳密に言えば、「ことはない」は<往々にして>正解になる「ことはない」です。往々にしてを入れないと、論理学的な問題が出てくると思います。
過去問の解説は、「ことはない」とかコメントされていないので、自分で解説に突っ込みを入れるつもりで、過去問に取り組んで下さい。
【中島講師 プロフィール】
94年7月外務I種最終合格。国家I種経済職も1次合格していたが、外務I種合格により辞退。
外務省は4年勤務、アラビア語研修を命ぜられ、中近東第1課、エジプト大使館に勤務。諸事情により任期途中で日本に戻り人事課等に勤務。
2001年より公務員試験講師。延べ2400回の授業、24000人の学生に講義。
主な著作:「受験ジャーナル直前対策ブック 暗記科目の語呂合わせカード」、「語呂合わせで急所をチェック 公務員試験」(文芸社)