公務員1年目に知った用語第2弾は、「持ち回り」です。
文字通り、持って回るなのですが、何を持って回るのかというと、書類です。
組織の仕事は、ウェーバーが官僚制で分析したとおり、文書主義です。現在は電子決裁等も行われていると思いますが、基本はアナログな紙の上に書いた文書です。
通常の書類は、起案者(1年生も起案者になる場合が多い、課の下位者)、→係長→班長→課長補佐→筆頭課長補佐(外務省だと首席事務官)→課長→局長→(場合によっては次官)というルートで上がっていきます。
書類には足がないので、庶務の方が書類を運ぶのですが、いちいち一つの書類を動かすのでなく、局のボックスに入れて、それぞれの課に持ち帰る、定期的に首席のoutの箱から課長のinの箱に入れるという作業をされます。
ただ、世の中には突発事態かつ重大事態が起きます。北朝鮮がミサイル発射した!とかです。そういうときに悠長なことは言ってられませんから、この時に1年生が書類を持ち回るのです。起案者から、「人事課と総務課に持ち回りに行ってくれ」と言われると、人事課の担当官のところに書類を持っていて、担当官に決裁(サイン)をもらって、人事課長のところに行って決裁をもらって、総務課の担当官のところに行って決裁をもらって、総務課長のところに行って決裁をもらって、という作業をします。
この一連の過程が持ち回りです。
この持ち回りをすることによって、役所の中の仕事の流れがよくわかります。あとは決裁をもらう際に、自分の物腰が大事だったりします。いかにスムーズにサインをもらうかは、面接試験で問われるのではないかな、と個人的に思います。
役所にはいろんな人がいて、多いのは、仕事はできるけど人間的に癖の強い人です。そういう人からいかに決裁をもらうかが、大事だったりします。
あと課全体が決裁がもらいにくい課もあったりします。懸案の多い課がそれにあたったりします。
また、持ち回りは決裁をもらう課に、人もいるのだから最優先で決裁して下さいという、無言の圧力をかけるという意味合いもあると思います。実際にその課に、1年生が来ているのですからね。
【中島講師 プロフィール】
94年7月外務I種最終合格。国家I種経済職も1次合格していたが、外務I種合格により辞退。
外務省は4年勤務、アラビア語研修を命ぜられ、中近東第1課、エジプト大使館に勤務。諸事情により任期途中で日本に戻り人事課等に勤務。
2001年より公務員試験講師。延べ2400回の授業、24000人の学生に講義。
主な著作:「受験ジャーナル直前対策ブック 暗記科目の語呂合わせカード」、「語呂合わせで急所をチェック 公務員試験」(文芸社)