「バイとマルチ」~元公務員講師のコラム~

一般には知られてませんが、外交業界でよく使われる概念にバイとマルチというのがあります。
バイはバイラテラル(bilateral)の略で、二国間という意味。
マルチはマルチラテラル(multilateral)の略で、多国間という意味。
日米安全保障条約はバイの条約、国連憲章はマルチの条約という言い方をします。

バイとマルチというのは、外交のいろいろな局面で出てきます。
トランプ大統領は、バイのディール(取引)を好んで(米朝首脳会談)、マルチには懐疑的です(TPP、パリ協定離脱等)。
また、日中関係もバイの関係ですが、東アジアやアジア全体を考えるとマルチにも大きな影響を与える、単なるバイの関係には留まらないことが分かります。
国連や環境や国際機関はマルチの関係です。
対中東外交においても、相手国をバイで各個撃破するとともに、中東全体でどうあるべきかという、マルチの構想も問われます。

今話題の日韓関係もバイの典型かもしれませんが、ASEANから日韓を見ると、「日本は同じ成熟した経済を持つ韓国に対して大人げない」とか、そういう風に見えるかもしれません。日韓関係でも、マルチを考慮しなければなりません。
むしろ韓国に対して、「日本(私)相手にならまだこういう言い分も通じるが、世界の他の国が主権国家韓国をどう見ることになるか考え直した方がいいよ」と、マルチの視点で隣人として、冷静に忠告した方がいい場面もあるでしょう。

バイとマルチというのは、人間関係や会社関係にも応用可能でしょう。
外務省の課も、バイの課とマルチの課と分けることもできます。

 

【中島講師 プロフィール】
94年7月外務I種最終合格。国家I種経済職も1次合格していたが、外務I種合格により辞退。
外務省は4年勤務、アラビア語研修を命ぜられ、中近東第1課、エジプト大使館に勤務。諸事情により任期途中で日本に戻り人事課等に勤務。
2001年より公務員試験講師。延べ2400回の授業、24000人の学生に講義。
主な著作:「受験ジャーナル直前対策ブック 暗記科目の語呂合わせカード」、「語呂合わせで急所をチェック 公務員試験」(文芸社)

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