ちなみに、私は干支はイノシシです。
「過去問の大切さはわかった。でも過去問と同じ問題は2度と出ないではないか。それなら予想問題集等を勉強した方が効率的ではないか」と皆さんは思われるかもしれません。直感的には正しい考え方です。
過去問と全く同じ問題は2度と出ないし、「来年の問題を予測して効率的に準備したい」と思うのなら、予想問題集や「当たる、的中」と言われている模試の勉強に心が引かれるかもしれません。そういう勉強を中心にされている方もいらっしゃるでしょう。
しかし、予測というのは過去の延長線上にあるものです。
先ほど説明したように過去問は「まんまで」同じ問題は出ませんが、「そっくりさん」くらいのレベルの問題は枚挙に暇がありません。
加えて「傾向を予測したい」というのは、何が出るかわからないからの不安の裏返しと思われますが、「過去問より大きなイノシシは出ません」。
不安は確かにわかりますが、その不安は普段の地道な過去問の勉強で薄めるしかありません。来年の試験で難問・奇問や今までみたことのない問題が出たとしても、そういう科目の過去問を「しっかり」検討して、かつ過去の受験生の時間軸に立って検討してみれば、今日の目線では「ありふれた典型問題」に見えても、当時の受験生にとっては革新的な問題というのがあるはずです。
過去問は単なる問題演習(アウトプット」の素材ではなく、知識を入れる素材(インプット)にもなるし、問題傾向を探るいい素材でもあります。
「過去問だけで十分と言うけれど、過去問は難しいぞ」と思われる方もいらっしゃるでしょう。
科目によって、過去問の位置づけは違います。
いきなり過去問が成立する科目は、文章理解の現代文(英語が得意な人は英文も)、人文科学、社会科学、行政系科目です。こういった科目は(理屈もあるが)、要は暗記なので、まずは問題にぶち当たって(帰納法的アプローチ)、問題を重ねていけば、その科目を貫く理屈や歴史なら流れ等が見えてくるはずです。
一方、数的処理、法律系科目、経済系科目等は、テキストでその科目の背後の理論や代表的解法を一通り理解してから(演繹法アプローチ)、それから過去問に取り組むのが効率的でしょう。ただ、労働法や商法、経営学等はいきなり過去問が成立しえます。上記のいきなり過去問が成立しないこれらの科目でも、テキストはあくまで「手段」であることはゆめゆめ忘れないようにして下さい。目的はあくまで過去問です。
文章理解や数的処理等で、自分の志望する試験の問題がなかなか解けないという方は、地方初級・国家一般職(高卒)の問題を検討することを強くお勧めします。
同じ公務員試験だから、ひっかけ方とか、肢の癖とかよく似ているし、特に英語がネックになっている方等は、「初級」の問題は格好の素材です。
過去問さえ解ければ、来年の問題も満点は無理でも「合格点」は取れるはずです。「過去問より大きなイノシシは出ない」のですから、過去問に十分取り組んで頂きたいです。
【中島講師 プロフィール】
94年7月外務I種最終合格。国家I種経済職も1次合格していたが、外務I種合格により辞退。
外務省は4年勤務、アラビア語研修を命ぜられ、中近東第1課、エジプト大使館に勤務。諸事情により任期途中で日本に戻り人事課等に勤務。
2001年より公務員試験講師。延べ2400回の授業、24000人の学生に講義。
主な著作:「受験ジャーナル直前対策ブック 暗記科目の語呂合わせカード」、「語呂合わせで急所をチェック 公務員試験」(文芸社)