私が役所で1年生だったときの話です。
当時役所では、ワープロソフトで一太郎(!)を使っていました。
何となくで使っていたのですが、詳細な使用方法、使いこなし方がよくわからなかったので、斜め上の上司(直接の上の上司ではなく、やや関係性の薄い上司、将来の事務次官と言われていた優秀な上司)に「マニュアルがないか」聞いてみたところ、「ない」と返答されました。
「マニュアルがないのなら、覚えられない」と私が言うと、その上司が、そうですね何とも言えない、一言で言えば嫌悪感、説明的に言うと、「お前はそういうこと言っていると、この先の役人人生はないぞ」と言うような表情をされたのが、非常に印象的でした。
もう一つ、私が勤務していた当時、イスラエルのラビン首相が暗殺されました。1日で外務大臣の日程、諸懸案を調整して、即日葬儀に派遣するというオペレーションを、1日徹夜で行いました。
緊急かつ大変で、濃密な1日が終わったのですが、職場の上司(先ほどとは別の斜め上の上司、仕事師の上司)が「中島君、今日の緊急オペレーションのマニュアルを作るといいよ」と言われました。
私は指示をこなすのが精一杯で、マニュアル作りも何もなかったので、このマニュアルは作れませんでした。しかし、自分の今の仕事をマニュアルにすると、どうなるのかなという視点は非常に大事だなと思いました。そういう視点があると、自分の仕事を客観視することができます。
皆さんは1年生になるのですが、マニュアルに頼るのでなく、むしろマニュアルを作るという視点で仕事をするのが、日々の仕事が充実し、後輩にも役に立ち、皆さんも客観的に仕事ができ、周囲の評価も上がる、といういいことずくめです。
是非、マニュアルを作って下さい。
【中島講師 プロフィール】
94年7月外務I種最終合格。国家I種経済職も1次合格していたが、外務I種合格により辞退。
外務省は4年勤務、アラビア語研修を命ぜられ、中近東第1課、エジプト大使館に勤務。諸事情により任期途中で日本に戻り人事課等に勤務。
2001年より公務員試験講師。延べ2400回の授業、24000人の学生に講義。
主な著作:「受験ジャーナル直前対策ブック 暗記科目の語呂合わせカード」、「語呂合わせで急所をチェック 公務員試験」(文芸社)