専門科目の民法にはまっている人も多いと思います。
民法の難しさの一つの要因は、まず「量」です。
1044条という圧倒的なボリュームが、行く手を阻みます。
総則、物権、債権総論、債権各論、親族、相続。感覚的には、憲法の5~6倍くらいのボリュームがあると思われます。
大量という点で、まず難解です。
それから「質」です。一言で言うと、円環的構造です。
テキストの最初のページを理解するために、最後のページの理解が必要になる。テキストをどんな順番で構成しても、この構造からは逃れることはできません。
家電量販店でパソコンを買うという事例にしても、売買契約であり(債権各論)、契約にトラブルがあったら債務不履行であり(債権総論)、未成年者だったら制限行為能力者であり(民法総則)、パソコンに焦点を当てると物権の移転であり…。単純に一つの単元で話が完結するのでなく、常に他の項目との連関を見ないと、民法がわかったことにはなりません。
地球儀(3次元)を正確に正しい形、正しい面積、正しい方位で地図(2次元)に描くのは不可能なのと同様に、民法の扱う現実の取引社会(3次元)を、正確に2次元的な民法の世界に取り込むのは、そもそも不可能と言えるかもしれません。
円環的構造はやむを得ないのです。
この圧倒的ボリュームと円環的構造という点で、民法は難関科目です。
対策としては、テキストと過去問の往復読書です。過去問を読む、該当部分のテキストを読む、テキストにマーク、過去問は誤文を正文化する。これを繰り返すことです。正解肢のみ暗記する、というのも有効な勉強法です。
民法は加点を狙う「攻め」の科目というよりは、失点を防ぐという「守り」の科目という位置付けの方がよいと思います。
債権法改正が2020年から施行されます。出題も改正法になります。
しかし、数年は基本しか訊かれないでしょうから、あまり深入りしないことです。
【中島講師 プロフィール】
94年7月外務I種最終合格。国家I種経済職も1次合格していたが、外務I種合格により辞退。
外務省は4年勤務、アラビア語研修を命ぜられ、中近東第1課、エジプト大使館に勤務。諸事情により任期途中で日本に戻り人事課等に勤務。
2001年より公務員試験講師。延べ2400回の授業、24000人の学生に講義。
主な著作:「受験ジャーナル直前対策ブック 暗記科目の語呂合わせカード」、「語呂合わせで急所をチェック 公務員試験」(文芸社)